FPわかし’s blog

目指せ!お小遣い投資家

6.損切(ロスカット)しない その2

損切をしないということを機関投資家のケースで説明しましたが、ここではトレーダーのケースで説明します。トレーダーは価格の値動きに着目し、相場の上がり下がりの差を利益として狙っていく人たちです。デイトレーダーという言葉もありますが、まさにリアルタイムに売り買いを繰り返していくやり方です。

 

例えば、銘柄Aの株価が朝1500円だったのがお昼に1700円まで上がったとします。銘柄Aを朝一番に1500円で買って、1700円で売ると200円の利益が出ます。こういうことをたくさんの銘柄で何度も行うことで利益を積み重ねていくのです。

 

しかし、相場は海と同じで先の予測がつきません。先ほどの例で銘柄Aが1700円に上がったからいいものの、1500円からどんどん下げてしまう場合もあるのです。そこで、トレーダーは複数の銘柄に分散させ、いくつかは損しても他が利益を上げることで全体としてプラスになるようにトレードしていくのです。

 

例えば、銘柄A、銘柄B、銘柄Cをトレード対象としたとき、それぞれの銘柄で損切ルールを決め、全体としての損失をコントロールします。そして、上がる銘柄もあれば下がる銘柄もありますので、上がったときにはこのくらいで売るという損切を含めた売買ルールを設定するのです。全ての銘柄でプラスにならなくても、損失を出した銘柄は早めに売ってしまうことで、全体として利益を出せるようにルールを設定していくわけです。

 

さらに、多くのトレーダーは信用取引をしています。というのは、トレーダーは少しでも上がり下がりの差が出なければ利益をとれませんので、相場全体が一方的に下落しているときは利益を上げることが難しいのです。そこで、株価が下がることでも利益を生み出す方法をとるのです。それには、ここでは詳しく解説しませんが「空売り」という方法があり、株価が下がると利益が出るということが可能になります。

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信用取引をしていれば、なおさら損切が必要になります。あまりに下落してしまうと追加の保証金が必要になりますし、自分が持っているお金の範囲を超えて(借金して)売り買いしているわけですから、もし大暴落したら巨額の損失を抱えることになります。

 

このような背景があるので、トレーダーには損切の技術とルール設定が必須になります。 しかし、繰り返しになりますが、投資とは、価値あるものを安く買い、保持しながら配当をもらう。もし価格が上がったら、いったん売却して、次にまた安くなるのを待つ。これをのんびり行うことです。もともと、価値あるものを安く買っているわけですから、いずれ価格が戻ってくるのを待っていればいいだけです。戻るのに時間がかかってものんびり配当をもらい続けるだけです。極端な話、投資のことは忘れて、株価を見ずに毎日の生活を普通にしていればいいのです。

 

相場というのは海と同じで、先の予測ができません。もっと上がるのか、もっと下がるのか、それは誰にもわからないのです。ですから、自分が買った価格が最も安い底値であることは稀で、安いと思って買った後も引き続き価格が下がっていくことの方が多いのです。この意味で言うと、含み損を抱えるというのは、ごくごく当たり前のことです。

 

自分が投資をしているのか、トレードをしているのか、ここをはっきりさせる必要があります。トレードと投資でどちらが良い・悪いというのはありませんし、どちらをやるのも自由です。しかし、繰り返しになりますが、そこを混同して自分が何をしているのか分かっていない状況はたいへん危険ということなのです。

 

2016年6月ですが、イギリスEU離脱という世界的なニュースに伴い、日本株は暴落しました。私は当時、今と変わらず『お小遣い投資家』として投資をしていましたが、新聞記事を見て驚いたことを今でも鮮明に覚えています。それは6月25日の朝刊でした。

 

「朝一番に持っている株を全て売却したが1000万円は損した。遅ければもっとひどいことになっていただろう。相場が落ち着くまで株取引はできない。」というある投資家のコメントでした。

 

実は、この記事が出た前日の6月24日に日本株が暴落したのです。

2016年6月23日 日経平均株価 16,238円
2016年6月24日 日経平均株価 14,952円

一日で1286円の下落です。これは7.9%(1286円÷16238円)下がったことになり言うまでもなく暴落です。しかし、その後、日本株は上昇に転じます。

2016年7月13日 日経平均株価 16,231円
2016年9月6日 日経平均株価 17,081円

暴落した日から3週間ほどで暴落前の株価まで戻し、そこから2ヶ月ほど経つと更に上昇してきています。

 

話を新聞記事に戻すと、株を全て売却した方は失った1000万円をどう理解しているのだろうか、その1000万円はどこへ消えたのか、「遅ければもっとひどいこと」のひどいことは何を意味しているのだろうか、という疑問が残るのです。そして「相場が落ち着くまで株取引はできない」というコメントから推測すると、株価が戻ってきた7月中旬から株を買い始めたのではないでしょうか。

 

この方を悪く言うつもりはないのですが、当時私はこの記事を読んでとても考えさせられました。おそらく、この方は株価が上昇してきたら買い、株価が下降してきたら売るという『お小遣い投資家』と全く反対のことをしているのだと思います。ちなみに、この年は11月にアメリカ大統領選挙があり、日本株が大きく動きました。その際も、先ほどの記事の方と同じようにお金を失った人がたくさんいるのではないかと思うのです。

 

損切は単なる手段であり道具です。必要とする人もいれば、必要としない人もいます。ただ、少なくとも損切をすると必ずお金が減っています。損切を必要とするのは、機関投資家とトレーダーであり、信用取引をしない個人投資家には必要ないのです。