FPわかし’s blog

目指せ!お小遣い投資家

5.損切(ロスカット)しない その1

投資で大切なことは、お金を減らさないことです。そのためには、損切(ロスカット)をしないことです。損切とは、含み損を拡大させることを回避するため、含み損が少ないときにいったん売却して損失を確定させ、損失を一定の範囲に抑えることです。

 

花子ちゃんがある会社の株を2000円で買ったとします。すると、翌日から下落が始まり1800円に下がりました。このままだと明日以降も大きく下がりそうです。そうなると含み損がどんどん膨らんでしまうため、花子ちゃんは1800円のときに売却しました。その翌日、その株価はさらに下がり、1600円まで落ちてしまいました。花子ちゃんは、1600円に落ちたのを知り「昨日1800円で売っておいてよかった」と胸をなでおろしたのでした。

 

花子ちゃんが1800円で売ったのが「損切」です。損切することによって「2000円-1800円=200円」すなわち、購入額2000円に対して損失額200円ですから損失を10%に抑え込むことができたわけです。もし、損切しなければ「2000円-1600円=400円」まで損失が膨らみ、損失は20%になったわけです。当然ですが、20%の損失を出すより、10%の損失の方が得だということです。

 

この損切は投資の世界では常識として扱われる手法であり、よく「投資の初心者は損切がうまくできないから失敗する」とか「損切が上手にできるのが投資の上級者」と言われます。つまり、損切をするのは当たり前で、いかに上手く損切するかが投資の実力とも言われるのです。例えば、5%下落したら損切するという損切ルールをしっかり決め、そのルールに従ってちゃんと損切しなさい、というのが投資の常識なのです。

 

損切という手法は重要でうまく使うべきという考え方には確かに私も賛成です。しかし、個人投資家が「投資」を行う場合に限っては損切をする必要はありません。損切は単なる手段であり道具です。その道具を何のために利用するのかということを追究していくと、その結論に至るのです。『お小遣い投資家』は損切をいっさいしませんし、私も過去一度も損切をしたことはありません。

 

そもそも、損切が必要なのは機関投資家とトレーダーだけだと思うのです。機関投資家は多額の資金を様々なものへ投資します。そして、機関投資家が重要視するのは投資のパフォーマンス、すなわちある時点での資産の時価総額です。

 

例えば、3つの銘柄に投資していたとします。

銘柄A 10億円、銘柄B 10億円、銘柄C 10億円(合計30億円)

 

あるとき銘柄Bが何かの理由で大きく下落を始めたとします。どんどん下がっていき、9億円まで落ちてしまったとすると、時価総額は29億円まで下がります。銘柄Bの下落は止まる気配がなくまだまだ下がっていきそうな雰囲気です。

 

一方、別の銘柄Dというのが将来有望で株価も上がり始めており、これからさらに上昇していく雰囲気です。そうなると、銘柄Bをいったん売却して、銘柄Dに乗り換えます。銘柄Bを9億で売却し、銘柄Dに9億円を投資しました。すると、銘柄Bは7億円まで下がり、銘柄Dは12億円まで上がりました。

 

もし何もしなかったら現時点での時価総額は「10億+7億+10億=27億円」です。しかし、銘柄Bを損切したことで時価総額は「10億+12億+10億=32億円」です。どちらの結果が良いのかは言うまでもありません。実際はもっと複雑なことをやっていると思いますが、資産総額をコントロールするには、下落していくものをいかに早く手放し、上昇していくものに乗り換えていくかが重要であるということです。

 

機関投資家(仕事として投資をする人の総称として)には、インデックス投資とアクティブ投資という2つのタイプがあります。

 

インデックス投資とは、特定の指数に連動した値動きを目指すものです。例えば、ニュースなどで「今日の日経平均株価は」と聞きますが、日経平均株価というのは、簡単に言うと日本を代表する225社の株価の平均値です。日経平均株価に連動するインデックス投資とは、日経平均株価が上がったら上がり、下がったら下がるもので、いかに日経平均株価とぴったり同じ動きをするかが大切になります。当然ですが、動きをぴったり合わせるには、日経平均株価に含まれる225社の株を同じ割合で所有しておくことになります。

 

アクティブ投資とは、インデックス投資を上回る運用成績を目指すものです。例えば、日経平均株価が、2019年3月末20,000円、2020年3月末21,000円だったとします。すると日経平均株価に連動するインデックス投資の成績は1000円上昇したわけですから5%アップです(1000円÷20000円)。この5%アップよりももっとアップすることを目指し、どの銘柄にどの割合で投資するかがアクティブ投資の腕の見せどころになります。

 

基本的にインデックス投資は指数に連動させるだけなので手間がかからず手数料が安いのに対して、アクティブ投資は色々なことを考えて投資するので手数料が高いのです。当然、高い手数料を払うわけですから、アクティブ投資にお金を投じた人はインデックス投資を超える運用成績を求めます。

 

機関投資家は損切が上手にできることは大切だと思いますし、特にアクティブ投資にとっては、相場の動きに対して銘柄の組み換えが必要でしょうから、損切が必須になるのは理解できるのです。しかし、個人投資家にとって時価総額はそんなに大切なことでしょうか。

 

例えば、先の例で銘柄Bが10億円から9億円、そして7億円まで下落しましたが、もし銘柄Bの下落が一時的なもので数年後にはちゃんと戻ってくるとすると含み損を抱えたままじっと待っていればいいと思うのです。

 

逆にいうと、個人投資家として、含み損を抱えても数年間じっと待てるような銘柄に投資していれば損切をする必要などないのです。『お小遣い投資家』は損切しないというのは、正確に言うと、損切する必要のない方法で投資をしていくということです。

 

例えば「オリンピック関連銘柄」と言われるものがあります。2020年(2021年に延期)東京オリンピック開催に向け建設業とか観光業の仕事が増えるから株価も上がっていくというものです。当然ですが、オリンピック開催に向けて徐々に株価が上がり、オリンピック終了後は株価が下がるかもしれません。このような一時的な上昇と下落の相場で儲けようとすると、場合によっては損切も必要になるかもしれません。

 

しかし、個人投資家が目指すべき方法は、オリンピックがあろうがなかろうが、今後も私たちの生活に欠かせない商品・サービスを提供し続ける企業の株長期的かつ安定的な価値を生み出す資産に絞り込み、それらが何らかの理由で一時的に大きく価格を下げた時に投資することです。このやり方を続ける限り、価格が下がった際に損切しなければならない局面はなく、むしろ安い価格で買い足していく局面になるのです。